”知は力なり” フランシス・ベーコン

かなり以前の写真、青一から銀座線で赤坂見附乗り換えで丸の内線が来るホームで待っている時の壁に、この三国志の広告シリーズの掲示がいつもあった。優れているというよりも、気になり、にやりとさせる面白い広告であった。

中世イギリスの哲学者であったフランシス・ベーコン、知に関する名著・名言がある。本を読み続けている時に、ふと何故読むのかと思う時に、これらの言葉がとても重要であり、心に残る。1561~1626年に存命した。それはつまり日本における室町後期から安土桃山を越え、江戸初期である。ということは世界的に見ても革新的で、この時代は面白い人材が生きていた時代であったということが見てとれる。中でも「知」に関する四つの名言は珠玉である。

①「知は力なり」

フランシス・ベーコンは「知は力なり」という名言を残したが、それは知が力をもったものだという意味だけをもつ名言ではない。経験によって得られた知を実際に力にしていくことが重要なのだ、という意味を含んだ名言なのである。

フランシス・ベーコン以前の科学思想は、アリストテレス的な色合いを強くもっていた。アリストテレスは、科学的の基礎は「物事を観察して、その記録を蓄積し、性質や特徴を見出しては整理していき、知識をきちんと体系化して構築していく」ことにあると考えていた。

人間が手をくわえていないものが自然であり、人間は自然を模倣するものである。自然は人間より優位にあるもので、自然に手をくわえていくことは神をまねた人間の驕った行為だという考え。そういった考え方が広まり、科学的手法においても観察が重視されたのである。しかし、フランシス・ベーコンは、観察重視の科学的手法にNOを突きつけた。自然に介入し、実験した。その結果として誕生したのが、「知は力」という名言である。実験と経験によって得られる「知」を使うことで自然を支配することができる。その思想が近代科学の礎ともなっている。

②「読むことは人を豊かに、話すことは人を機敏にし、書くことは人を確かにする」

私を最も動かした彼の言葉の一つであり、常に意識している言葉。フランシス・ベーコンは情報を知識として取り入れるだけでなく、それを話したり書いたりすることで、その知識が確かなものとなり、生きた使える「力」となる知識になると考えていた。フランシス・ベーコンのこの名言はそれを表現することの大切さを教えてくれている。

③「海のほか何も見えない時に、陸地がないと考えるのは、決して優れた探検家ではない」

それまでの学問において、人々が人間の力では真理にたどり着くことはできないと考える傾向が根深くあったのを批判したのである。何も見えないからといって、それをないものと考える態度は間違っている。先に行ってみなければ、本当に陸があるかないかは分からない。フランシス・ベーコンは、物事はやってみなければ分からないことばかりなのだとこの名言で伝えようとしたのである。

「最上の証明とは経験である」

情報を得ることは大事である。しかし、それを自分の血肉に変えて力とするには経験が必要なのである。