「割って、城を」

以蔵の話でなくて、その中に挟み込まれた、秀逸な短編「割って、城を」であります。織部焼の名前の祖である、古田織部正(ふるたおりべのしょう)が出てくる話が興味深く読まされました。茶人であり、庭をデザインする人でもあり、殿さまへの影響が大きかった人、それほど茶(この場合は茶道の茶)は重要であった。
でも茶の話でもなく。
織部正本人の話が出て来て、稀代の目利きである彼は「名物、大名物の茶碗を求めては、しきりと砕き、塗り師に接着させ、その継ぎ目にあらわれる漆と黄金の肉、いろ、模様を愛し、むしろそれを溺愛していたという」焼物のいいものが出れば、それをすぐさま割って、現代でいう金継ぎを行なって自分の作風にしたという。目利きもここまで行くか、と思わせた短編で興味深く読ませていただきました。

本引用において何を申し上げたいかと申しますと、貴重な焼物であったとしても「生活の用」にすれば割れてしまう可能性があります。
その折には諦めずに是非ご相談ください(私どもでお買い上げいただいたものに限りはしますが)とても上質な金継ぎの仕事をされる方をご紹介いたします。そして織部正の話にありますように、また新たな美として生き続ける可能性もございますので。
作家の作品はいろんな意味を持ちます、出会いであり、自分との対話ができる、それが作家が作った工芸の特徴です。
それを出会いであると思い、大切に持ち続けることに意味があり、また、それを生活の用にできるということはなかなかないのであります。
使ってこそ活かされるアート、それは焼物。
これ、覚えておいてください、私どもは対応させていただきます。小さな小さなお店の役割だと認識して商いさせていただいております。



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