投稿日: 9月 04, 2025

トゥイギー・トゥイギー

カテゴリー: Liberal Arts

今日はこれかけてます。小西さんのセンスってほんとすごいな、変わる人がいないな、渋谷系

3時間も待っていたのよ

私ネコと一緒に

この写真はロンドンでの私の写真、ブラックウォッチのセットアップね。

Screenshot

投稿日: 9月 04, 2025

英国湖水地方が織りなす文化的景観遺産の解説

カテゴリー: 開物成務

私は湖水地方には1度、プーの100エーカーの森にも2度訪れている。それらをつぶさに見てきて思うのはイギリスにおける物語と環境保全と文化遺産の関係だろう。それらの、今回は湖水地方を報告書として解説していきたい。人生の晩年のまだ若いうちつまり60代終わりぐらいまでに、会社を卒業してからの旅の一つ目にお勧めしたい場所であります。ピーターもプーの物語もまずそこから入っています。それでとても好きになって、とにかく環境保全の規模が違う。なぜピーターにこだわり続けるか?です。

世界中で世代を超えて愛され続ける『ピーターラビット』の物語は、単なる子供向けの絵本にとどまらない。その創造の根源には、作者ビアトリクス・ポターの個人的な人生の軌跡と、英国北西部に広がる湖水地方の壮大な自然との、深く揺るぎない絆が存在する。この報告書では、ポターの人生がどのようにして湖水地方の文化的景観と結びつき、最終的に世界的な文学遺産および自然保護の象徴となったのかを、多角的な視点から詳細に分析する。ポターの創作活動の原点から、後半生を捧げた農場経営、そして自然を守るという壮大な遺産に至るまで、その物語が現代にまで継承される背景を探る。

第一部:都会の檻から「原風景」へ:創作の芽生え

ヴィクトリア朝の孤独な子供時代

ビアトリクス・ポターは1866年、産業革命で財を成した裕福な中産階級の家庭に生まれた 。当時の上流階級の慣習に従い、彼女は学校には行かず、家庭教師による教育を自宅で受けた 。弟が6歳で生まれるまで、彼女は他の子供と接する機会もほとんどなく、その内面は孤独に満ちていた 。   

しかし、この閉鎖的な環境は、皮肉にも彼女の並外れた創造性と、自然界に対する鋭い観察眼を育む土壌となった。彼女は自宅の庭の植物や昆虫、そしてペットとして飼っていたウサギ、カエル、イモリ、ヘビなど様々な動物たちを飽くことなくスケッチし、その画才を着実に伸ばした 。彼女は後に、もし学校に通っていたら、教育によって独創性が薄れていただろうと語っている 。この事実は、彼女の恵まれた境遇がもたらした孤立が、彼女の芸術的感性を形成する上で不可欠な要素であったことを示唆している。彼女にとって、ロンドンは「束縛の象徴」であり、夏の休暇で訪れる田舎こそが「人格的独立の象徴」であったという分析は、彼女の創作の核心に深く根差した精神的な対立を浮き彫りにするものである 。   

湖水地方との運命的な出会い

ポター家は毎年、3ヶ月に及ぶ長い夏季休暇を風光明媚な場所で過ごすことを常としていた 。幼い頃からスコットランドの田舎で自然への愛を育んだポターは、16歳になった1882年の夏に初めて湖水地方を訪れる 。   

彼らが滞在したのは、ウィンダミア湖のほとりに建つゴシック様式の館、レイ・キャッスルであった 。この地で彼女は、のちにナショナル・トラストの創設メンバーとなるハードウィック・ローンズリーらと出会い、彼らが構想していた地元の自然保護運動に深く共感した 。この16歳の夏の経験は、単なる休暇の思い出に留まらなかった。それは、彼女が創作活動を通じて得た成功の果実を、その創作の源泉である自然の保護に捧げるという、彼女の生涯の方向性を決定づける重要な転換点となったのである。物語の誕生は、同時にその舞台となる地の未来を救うという、彼女の個人的な使命の始まりでもあった。   

第二部:ヒルトップ:物語が現実となる場所

『ピーターラビットのおはなし』の成功と農場の購入

ポターが友人の子供に宛てた手紙から生まれた『ピーターラビットのおはなし』は、1902年に出版されるやいなや世界的な大成功を収めた 。ポターは、このベストセラー絵本の印税収入を元に、1905年、かねてより心を奪われていた湖水地方のニア・ソーリー村に「ヒルトップ・ファーム」という農場を購入した 。   

彼女のヒルトップへの移住は、個人的な自由と独立への強い渇望だけでなく、当時の社会的潮流とも深く結びついている 。急速な工業化と人口増加で環境が悪化した大都市ロンドンを離れ、田園地帯に理想郷や別荘を求める富裕層の動きが活発化していた時代に、ポターはまさにその思想を体現したのである 。彼女のこの選択は、個人的な幸福の追求と、より大きな「田園志向」という文化的運動の交差点に位置づけられる。

『ポター三十六歳の頃の成功であり、パリではアール・ヌーヴォーからアール・デコだった時代を生きている、白洲次郎も同時代に生まれ、重要な時期をイギリスのカントリーサイドで過ごしていて、武相荘の根源となっていると言える。正子でなくて次郎であるのだその武相荘の根源は。』プリンシプルである。

絵本に描かれた「実在する風景」

ヒルトップと、そこから徒歩5分ほどの場所にあるカースル・コテージ 、そしてその周辺のニア・ソーリー村は、ポターの作品の主要なインスピレーション源となった。彼女は自身の家や庭、村の風景を熱心にスケッチし、それを物語の背景として忠実に描き込んだ 。   

物語と関連する具体的な場所は以下の通りである。

  • ヒルトップ・ハウス内部: 『ひげのサムエルのおはなし』でサムエルが通り抜ける階段の踊り場 や、『2ひきのわるいねずみのおはなし』に登場するドールハウスの小物 は、ポターが暮らした当時のまま現存している。   

  • ヒルトップ農場の庭: 『こねこのトムのおはなし』に出てくる白い門 や、映画『ピーターラビット』でマクレガーさんの畑として使用された場所 は、ヒルトップの敷地内にある。   

  • 村の風景: 『あひるのジマイマのおはなし』に登場するパブ「タワーバンク・アームズ」は今も営業しており 、村の赤いポストは『ピーターラビットのおはなし』に登場する風景そのものである 。   

このように、彼女の作品に描かれた世界は、湖水地方の実際の風景と見事に重なり合っている。

第三部:文学者から「自然の守護者」へ:ポターの遺産

ナショナル・トラストとの深い連携と土地購入

絵本作家として成功を収めた後、ポターは創作活動と並行して熱心な環境保護活動家となった 。彼女は『ピーターラビット』の印税を使い、周辺の農場や土地を少しずつ買い取り、開発から守る活動に専念した 。これは、彼女の文学的な成功が、その物語を生み出した「源泉」である自然を守るための手段となった、文学史において稀な例である 。   

ハードウィック・シープと伝統文化の継承

ポターの保護活動は、単に風景を守るだけに留まらなかった。彼女は自らの農場で、湖水地方の風景に欠かせない在来種のヒツジである、ハードウィック・シープの飼育に尽力した 。この羊は絶滅の危機に瀕していたが、彼女はハードウィック・シープの放牧が牧草地の景観を維持するために不可欠な要素であると考えた 。   

彼女は、自然と人間の営みが一体となって初めて美しい景観が維持されることを直感的に理解していた。これは、生物多様性の保護と文化的伝統の継承が不可分であるという、現代に通じる卓越した環境保護思想家としての彼女の側面を示している。

世界遺産登録における貢献

ポターは、自身の死後も湖水地方の自然が守られることを強く願っていた。彼女は1943年に亡くなる際、遺言によりヒルトップを含む15の農場と4,000エーカー(約1,600ヘクタール)以上の広大な土地をナショナル・トラストに遺贈した 。この膨大な遺産により、現在、湖水地方の約4分の1がナショナル・トラストの管理下に置かれ、開発から守られている 。   

2017年、湖水地方は世界遺産に登録された 。その登録理由は、氷河期に形成された「手つかずの自然」と、ワーズワースやポターら芸術家の創作活動によって育まれた「人々の営みが織りなす文化的景観」が評価されたことにある 。ポターの生涯にわたる努力は、この地の景観を保護し、その文化的・歴史的価値を現代にまで繋げる上で決定的な役割を果たしたのである。彼女がいなければ、私たちが絵本で見た風景は失われていた可能性が高く、世界遺産への登録も実現しなかったかもしれない。

第四部:ポターの愛した世界を巡る旅:現代の巡礼

ヒルトップ・ハウスの見学

ポターの遺言に基づき、ヒルトップ・ハウスは彼女が暮らした「そのままの姿」で保存されており、世界中から訪れる『ピーターラビット』ファンの真の聖地となっている 。ヒルトップの運営は、観光客に「本物」の体験を提供しつつ、遺産の保全を最優先するというナショナル・トラストの使命を象徴している。   

ハイシーズンには1日に500人以上が訪れるため、入場は時間制となっており、事前にチケットを予約することが強く推奨されている 。また、建物や調度品の大規模な保存作業のため、冬期は閉館する 。これらの措置は、この場所が単なる商業施設ではなく、未来の世代に引き継ぐべき貴重な文化遺産として、繊細なバランスの上で維持されていることを示している。   

ポターの愛した湖水地方には、ヒルトップ以外にも物語の世界に浸れる場所が数多く存在する。

  • ウィンダミア (Windermere): ロンドンからのアクセスが良好な湖水地方観光の玄関口であり、最大の湖であるウィンダミア湖を擁する。鉄道とバスの拠点であり、ホテルやB&Bが集まる 。   

  • ボウネス (Bowness): ウィンダミア湖畔の中心的な港町で、遊覧船クルーズの発着地でもある。お土産物屋やカフェが充実しており 、『ピーターラビット』の世界を体感できる没入型博物館「ザ・ワールド・オブ・ビアトリクス・ポター」がある 。   

  • ザ・ワールド・オブ・ビアトリクス・ポター博物館 (The World of Beatrix Potter): 絵本の世界観を再現したジオラマやオブジェが展示されており、子供から大人まで楽しめる 。ここでは、ヒルトップのような「現実」とは異なる、物語の世界を純粋に楽しむことができる。   

以下の表は、物語の舞台となった主要な場所とその関連情報をまとめたものである。

スポット名 関連作品・モデル 所在地 アクセス 見どころ
ヒルトップ・ハウス 『ひげのサムエルのおはなし』、『こねこのトムのおはなし』など Near Sawrey ボウネスからボートとバス(599番)で約10分 ポターが暮らしたそのままの姿で保存された家と庭。
タワーバンク・アームズ 『あひるのジマイマのおはなし』 Near Sawrey ヒルトップから徒歩5分 物語に登場するパブで、今も営業している。
マクレガーさんの畑 『ピーターラビットのおはなし』 ヒルトップ農場内 ヒルトップの見学と併せて訪れる 映画の舞台にもなった畑の入り口と石垣。
レイ・キャッスル ポターが初めて湖水地方を訪れた館 ウィンダミア湖畔 ウィンダミア湖のクルーズで立ち寄り可能 ポターが自然保護に目覚めた運命の場所。
ザ・ワールド・オブ・ビアトリクス・ポター 全作品 Bowness-on-Windermere ボウネス中心部 物語の全キャラクターがジオラマで再現された博物館。

結論:物語を超えて:時代を超越する絆

『ピーターラビット』は単なる子供向けの絵本やキャラものではない。それは、作者ビアトリクス・ポターの個人的な人生の軌跡、そして彼女が湖水地方の美しい自然と文化を守るために捧げた生涯の闘いを象徴するものである。彼女の文学的成功は、単に個人の富を築くためではなく、その物語を生み出した「源泉」である自然を守るための手段となった。

彼女の遺産は、芸術作品が単なる娯楽に留まらず、社会や環境に深い影響を与え得ることを示している。創造的な活動が実体的な価値を生み出し、未来の世代に引き継がれる文化と風景を保護するための財源となりうることを、彼女は身をもって証明した。

彼女が守り抜いた湖水地方の文化的景観は、絵本と同様に、今後何世紀にもわたって世代を超えて愛され続けるだろう。ポターの人生と湖水地方の絆は、単なる文学史の一ページではなく、文学、環境保護、そして人間の営みが織りなす、時代を超えて語り継がれるべき壮大な物語なのである。

まとめるに参考とした文献など

ONLINEジャーニー

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