ながい間さがしていたものを見つけたときのうれしさ、ひと目見た瞬間、気に入ってしまったもの。思わず手に入れて、自分の身のまわりに置くと、うれしさはともかく、急に身辺が豊かになったような充実感を覚えるのです。
そんな品々で生活を埋めてみたい。どの一つをとってみても、自分の目を通して、納得し、心を通じ合ったものでありたい。このことは、人と物とのつき合いでありながら、実は、人と人とのつき合いにも似た真剣なことでもあるのです。
ものが豊富に出まわり、ほとんど不便を感ずることはないと思います。その上、新しいものがつぎつぎと現われて、むしろ追われている感じすらする昨今です。
そこに、新しさということはもちろん、だいじなことですが、用だけ果たせば、すぐ交替というのでは、あわただしく、なぜか味気ない気がするのです。
もし、ほんとうによいものであったら、簡単に傷んだり、飽きがくるといったことはないはずで、むしろ、すこしぐらい傷んできても、新しいものと替える気にもなれないというのがほんとうでしょう。
飽きのこないよさ、時代を越えて通用するよさ、それこそ、ほんとうに「美しい品」というものでしょう。私どもの身のまわりから、そういうものを選び出し、よいもの、美しい品を見ていく一つの目安をと思っていただけたら、とても嬉しい、幸いです。
気に入ったものを、じっくりと使っていく。豊かさとは、こういうことなのではないでしょうかと、思いながら日々を過ごしていきたいなと。