山田 勇太朗

常滑の産地を見させていただいていて思うのは、若い世代の人達が急須作りに熱中しているということです。ややもすると伝統とか継承とかと言う、古めかしく重すぎる言葉ばかりの形容になってしまいがちな、急須の世界の中、その技術を磨き上げながら、形を作って結果を出して行くということは大変なことだと思っていますし、実際大変なことです。しかし今や時代は変わって、TEA FOR PEACEなどのイベントのように、運営する人達がとても若い世代の人たちが、お茶を取り巻く環境、とりわけ日本茶、そしてそれには無くては成り立たない「急須」の世界に、大いに興味を持ち始めていることがあります。そう、もっとライトでいいと。これは長い目で見てとても重要でありまして、お茶にスポットライトがあたればあたるほど、同時に急須の存在にもスポットライトがあたる。そこには常滑で無心にロクロを回す若者たちの重要で、今後の未来の楽しみのある姿が見えてくるからです。少なくとも私はそう思う。お茶は古来から日本の生活に根付いていて、切っても切り離すことはできないもの、他の嗜好飲料がどれだけ増えたとしても無くならないものです。いやむしろ重要性をもっと持つと言えます。それはトータルとしての「茶」の世界が、ライフスタイルとして日本に定着しているからで、その日常の表現として、お茶、つまり煎茶を飲むスタイルがあるわけですから、それは今までも、またこれからも、どんなに時代が変わろうと、健康な生活と心を癒してくれるものであり、私たちの重要な生活の一部であることに違いはありません。常滑の若い人たちの無心に急須に向かう、直向(ひたむき)な姿勢にいつも心打たれています。その状況を目のあたりにする時、いろんな人に急須のこの小さな体の大きな価値をなんとか広めていきたいと思ってしまいます。急須を知れば知るほど、急須が愛おしくなってくるはずなのです。飲むお茶一つ一つで急須があるぐらいの世界ですからね。日本人として特別な嗜好飲料としてのお茶と急須の関係、それは人の心にはとても重要なものだということを、若者たちの直向きな姿勢を見てそう思っています。

凛としています。
美しい口先から出る、一滴
作り手の心は細部に宿る
何かに悩んだら、美しい茶器と美味しいお茶で、解きほぐしてもらおう ”ひととき”
茶は美味しい、どの世代においても
大事に丁寧に使って、逸品を残して行きましょう